胸に刻んで
「いつまでイイ子ちゃん演じてんのー?」
ツンと背中をつつかれ後ろを振り返る。
後ろの席の男。
緑川優也(みどりかわ ゆうや)
バスケ部の一年生エース。
クラスのムードメーカー。
緑川はとにかく明るい。
ポジティブ思考な人なのだ。
「……なによ?」
「松澤さぁ、だんだん笑うの下手になってきたよな」
頬杖をつきながら口の端を持ち上げてにっと笑っている。
意味ありげな笑み。
さっきまでの私たちのやりとりを聞いていたに違いないな、この男。
まぁ、べつにいいんだけど。
「今もすっごい泣きそうな顔してる」