twin∞soul
12 ホンモノ
花屋のアルバイトをしていた時だった。

また現れたのだ。

あの、嫌な言い方をして八つ当たりをしてくる主婦が。

いつものように小さな子を抱いて。

私が作ったパック花をジッと見ている。

買うのか買わないのか...。

私から近寄るのは止めておこう。

見ているだけでも、あの人の気持ちが晴れるなら...。

私は知らん顔でバケツに水を汲んでいた。

「これ、ください」

「はい、いらっしゃいませ」

今日は何を言われるやら。

「お花に囲まれて、良いお仕事ね。キレイなお花に可愛い店員さんか...」

ほらほら、はじまった。

「そんな事ないですよ。手荒れもしますし結構重労働なんですよ」

キレイや可愛いだけで、仕事はやれませんよ。

「私は事務職しかしたことがないから、体力はないし、とうてい花屋は無理ね...」

じゃあ、言うなよ。

「お花が好きなら、できますよ。お花好きですか?」

「そうね、水をあげたら黙って育つから可愛いわ」

「手を欠けたか欠けなかったかが、よく分かりますもんね。素直で可愛いです」

私が笑顔で言うと、

「水を与えすぎると鉢物なんか特に、根腐れするらしいわね」

その主婦は珍しく、否定しずに私の話に答えた。
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