twin∞soul
店長さんは急いで来て、崩れ落ちた私をギュッと優しく包み込んでくれた。

「どうしたの、何があったの?」

二兎追うものは一兎も得ず。

「店長、私はもう花屋を辞めます。今日限りにして下さい!」
「何を言ってるの?」

あの主婦はまた流を連れて此処に来る!
そんなの見たくない!

流が子どもなんて抱いて、私以外の誰かと歩いていてる所を見たくない!

あんな姿を見たくないの!

「見たくないんです...もう、ここには居たくないんです...辛いんです...」

私は店長に訴えた。

「辛い何かを知ってしまったの?」

「もう、ここで生きて居る意味が、分からなく
なる...」
「...とにかく落ち着きましょ。ひどいわね。首にも蕁麻疹が出てるじゃない」

あの時のお兄さんの言葉が頭をよぎった。

流の悩みは解決したんだ。

私の事での悩みは、もう既に無かった事になっていて。
家庭の悩みは、家族に対しての事で悩んでいた。

私が現れたせいで、流の生活パターンが狂ってしまった。
だって私は流が既婚者だなんて、全然知らなかったんだもの。

そういえばデートの時。
私は一度も流の自家用車を見たことがなかった。
そういえば突然電話をした時。
電話の向こうで聞こえた声は、子どもの声だったんだ…。

何度も流の携帯電話が鳴っていたのは、私のアドバイスで、奥さんが鳴らしていたからか…。

色々深く追求したら、流の裏の真実が明るみになる。

キスマーク!…

あの時に、キスマークを付けてしまった事が今に繋がるならば…。

私の自業自得じゃない…。

元に収まる場所があるのなら、最初からその場所だけに収まっていてよ!

私は流にとって一体なんだったの?

「信じろ」
「居なくなったら探す」
「好きだ、愛してる」

確かに、流はそう言ってくれたけど。

店長さんは腫れて赤くなった腕を、ずっとさすってくれていた。

それを見ることで、やっと溜まっていた涙が出てきた。
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