twin∞soul
そして、その日は笑には一度も会えずに一日が終わった。

帰宅して、やはり妻の態度が明らかにその日から違っていた。
イヤミばかり言われるようになった。

「今夜は寄り道なし?」
「...」
「そりゃそうよね、キスマーク着けて堂々と私の目の前に居るんだから!今夜は私の話を聞いてもらうわよ!」
「何だ?…」

余計な言葉は言わない。
必要最低限の口数で、言い訳もしない。

「あなたは一体、何が不満で私を苦しめるような行為をするの?あなたの稼ぎは何のため?あなたの休日は誰のため?」
「...」
「すぐに答えられないのは何故?」
「...」
「あなたが仕事で居ない間も、遊びに行ってしまった間も、私一人で家事も育児も何もかも抱えている状態になってしまった...夫婦なのに。それを考えると悲しくて涙が止まらないわ」
「...すまない」

「謝ってなんて言ってない。あなたは夫である前に父親よ。いつまでも独身者の気持ちで生活されては困るわ。私達はあなたを頼って生活していくしかないのに。今更愛して欲しいだなんて、私は言わないわ。ただ、あなたが守るべきモノは私たち家族でしょ...あなたの大切なモノはここにあるはずよ!」
「...申し訳ない」

頭を下げた。
下げたまま、それでも俺の頭の中には...。

「浮気相手を私は責めたりなんかしない。だって私にとったら、あなたが悪いんだから。とにかくあなたに対しての信用は完全に崩れてしまったけれど、金輪際もうこういう人徳に反する事は止めてちょうだい」
「...悪かったよ」

「...!悪かったよじゃないわよ!あなた、さっきから頭を下げっぱなし。ふざけないでよ!私がどんな気持ちで...どんな思いで涙を見せずにあなたに淡々と話をしてると思ってるの!」

妻の口調は激しくなる。
でも、俺は何も言わない。
黙ったまま。

「あなたは変わった。そんな俯いて情けない...そんなにあなたは弱い人だったかしら?」
「ごめん...」

今はそう言うしかない。
感情が高ぶってる妻には、謝るしかない。

「携帯電話、今から浮気相手にメールをして。もう一切連絡は取り合わない、別れるって」

えっ...。

「早く!今、私の目の前で送りなさい!」
「分かった...」
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