twin∞soul
少しでも笑に触れてしまうと、追い求めていく事しか考えられない。おかしくなるくらい、自分自身が笑への思いで抑えられなくなる。

こんな気持ちが、自分の中にあっただなんて。

「あなた!何処に行くの!」
出掛けようとすると、すかさず妻が豹変して声をかけてくる。
「...ちょっと」
「こんな、寒い日に出掛けたりしないで!」
「...分かった」

無理に出て行く事もできない。

喫茶店に朝行くと、真一がベッタリ俺に付きまとう。
そこに、笑の姿はなかった。

会社帰りも、いつもの時間に帰らなければ、妻に何か言われる。
面倒だから、俺は妻の言いなりだ。

我慢してくれか...勝手だよな俺は。
結局、何をやっても笑を傷付つけてる。

でも、俺は...笑が好きなんだ。
窓越しから、そっと空を見上げて笑の満面な笑顔を思い出していた。

会社帰りに花屋に立ち寄った。
いつもなら、あそこに笑が笑って立っていた。
俺は、おまえが花屋に入りたての頃から知っていたんだよ。
このベンチから、おまえがいくつもの花を触っている所を、俺は見ていたんだよ。

次の日も次の日も、何度も笑がいないかと花屋に立ち寄るが、やはりもう辞めてしまったのか、笑が居る日はなくなっていた。

そら、そうだろな。

笑、俺はおまえを簡単に忘れられないぞ?
どうしてくれるんだ...。

引き離されていく事を実感する度に、更に笑への思いが強くなる。

居ないと知りながらも、会社帰りに花屋に立ち寄って、そこにいた女性に訪ねた。
「あの、以前こちらに勤めていた花園笑さんって、もう辞められたんですか?」

「いえ、今のところ長期休暇中ですが」
「そうですか」

「あなた、もしかして流さん?」
「えっ?...えぇ、そうですが」
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