twin∞soul
18 ふさわしい
あと、もう少しで荷物の整理も終わるな。

私は大きなカバンに洋服を入れて、時夫を見送り、再び実家に戻る。

別れる時夫には、できれば頼りたくないから。

雪が降る前に寒いし暗いから、早く帰ろっと。

玄関を閉めて、アパートの階段をおりた。

「...笑...」

最近よく、流の声での幻聴が凄くって。
私、うつ病かも。

好きすぎて幻覚みたいに、何だか居ないのにいつも生き霊みたいに見える。
私かなりキテるかも。

外を出歩いて、流っぽい人を見ると、急に心臓を握り潰されたみたいに痛くて、泣き出したりして。

ほら、今も目の前に見えるあの男を勝手に流だと思い込んでしまったりして。

流だと...思い込んで...。

「笑!」

ギュッと抱き締められて、その温もりにやっと気が付いた。

「笑...」
「流...?」

信じられない。
私、今、大好きな流にまた抱き締めてもらってるなんて。

白い息を吐きながら、流は私に何度も言う。
「会いたかったんだ...ずっと、会いたかったんだ…」
「うん...」
「我慢してくれなんて簡単に言ってごめんな...そんなツラい事をメールなんかで伝えてごめんな...」
「うん...」

流は泣いちゃいそうなくらいな顔つきで、私に謝る。

「うん…私はまた流の意地悪が始まったのかぁと思ってた。でも、そんな流が好きだから、謝らなくてもいいよ...」
「俺はおまえが居ないとダメなんだ...もう、キツくて...」

流は全然私の言葉をすり抜けて、たまっていた気持ちを全部吐き出しているようだった。

「騙してたんじゃないんだ、おまえと居たら妻や子ですらもどうでもよくなってて...笑の事だけで頭の中は、毎日おまえの事ばかり...会えない間もずっと...」
「うん...」
「おまえの事が全部知りたくて、意地悪したり試すような言葉も今までたくさん言ったりした...ごめんな...」
「うん...もう、いいよ。そんな事、気にしてないし」

流は、涙を貯めた目で私を見つめた。
「何?」
私はそっと流に笑顔をあげた。

「笑...」
私は腕を強く引っ張られて車に無理矢理乗せられた。
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