口付けを忘れずに
いつからだろう。
自分と異性の間で、これほど鮮明な壁が作られたのは。
中性的な美しい顔立ちをしていた父親譲りのこの顔は、いつしか人を遠ざけるようになってしまった。
決して自慢と言う訳ではない。
そもそも、この顔のせいで相手が無駄に意識する様な素振りを見せるから、男子とも中々自然に喋る事が出来なくなってしまったのだ。甚だ迷惑な顔面とでも言いたい程だ。
…私はもっと、男子とお喋りしたいのに。
無愛想ではあると認めるが、
自分と全く異なる生き物…即ち『男』と気楽に混じり合い和気藹々と喋れることは、今の私にとっては酷く難しい事に感じる。