愛のために生き、愛に殺された。
「ミチルはさ、自分が一番可哀想だって思ってんの?」


「は……?」



いきなり何だよ、顔に置いた手を少しだけよかし、アキラを思いっきり睨みつけた。


アキラは顔を背(そむ)けて、ただ淡々と話していく。



「何が一番で、何が不幸で、何が普通で何が可哀想かなんてさ。考えるだけ無駄だって。

ミチルは捨てられたんだよね?実の母親に。

なのに双子の片割れであるユウは捨てられずに可愛がられた。オカシイよねぇ。

で、ミチルを拾ってくれた女には虐められて、義姉には暴力振るわれて、義父にはセクハラ………


そこの家から逃げ出せたかと思えば【第七研究所】で捕まって体いじくりまわされて。


しまいには殺された。


確かに悲惨な人生だよね。俺から見てもほんと可哀想だよ。


でもさ、今、生きてるんだから。


こうして愛されてるんだから。


ミチルは不幸で可哀想な女の子なんかじゃない。むしろ幸せなんじゃ…「るっせぇんだよッッ!!!」



近くにあったガラステーブルを蹴り飛ばして立ち上がる。

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