鈴音~生け贄の巫女~
背が高いわけでもない、寧ろ取り分け低い方であった自分は高い者でなくとも見下ろされる事が多い。
そして見下ろされると言うのは、あまり気の強くはない凛にとって威圧感漂わせるものでしかなかった。
特に、目の前の男はあまり感情の籠らない、言ってみれば冷たい瞳を落としてくるわけで。
一層冷たく鋭く凛を射抜く眼光は、とても苦手なものだった。
一度息を飲むようにして気を落ち着かせてから、凛は口を開く。
「ここは、何処ですか」
「出会ってすぐに言った筈だ。安良波村、神隠しの先。お前の居た世とは違う場」
「そんなこと、信じられる訳ないじゃないですか……!誘拐ですか!?人さらい?それとも、それ、とも……っ!」
握っている手がぶるぶると震えだしたのは何故か。
恐怖か、悲しみか、はたまた絶望故か。
なんにせよ、現状泣いても仕方ないと頭の中でしかと理解しつつも視界が歪んでしまうのを止められない。