鈴音~生け贄の巫女~
「五木!?」
「五木さん!?」
シンと凛の驚きの声が重なる。
一瞬にしてシンは警戒の色を濃く出し、ギリと鉄格子を握る手にチカラが込められたのを凛は感じた。
なにせ、鉄格子の中に凛と五木。
外にシンがいるとあれば、この状況で凛に手を出されてしまっては何もすることができない—————………とは言うものの、もちろんタダで凛をどうこうさせるつもりもなければそもそもの話凛に手を出させる気もない。
シンから漂う"気"に、五木が背中に汗を流したのは本人以外知りえぬことである。
「っとぉ。そんなに警戒しなくていいんじゃねぇの。俺はこいつをどうこうしたくて来たわけじゃないんでね」
「信用ならん」
「……だよなぁ」
バッサリと言い捨てたシンに、苦笑いが浮かぶ。
「じゃあ、言い方を変えてやるよ」
しかしそれは、すぐに意地の悪そうな笑みへと変わった。
それに誰よりも早く気づいたのは同じ鉄格子の中にいる凛だ。
きっと睨みつけ、しかしそれを意図も簡単に手を振って払った五木は、意地悪く歪んだ唇を開く。