鈴音~生け贄の巫女~
「いっ、五木さ……!なんてこと、するんですか……!」
瞳に少しの涙を浮かべては抗議した。
そんな凜を見ては満足気に笑い、今度こそゆっくりとを踏み出し歩き出す。
……五木は笑っていた。
なぜだかわからない、しかしこんな状況にあっても尚凜と話していると心穏やかになれる自分がいることも確かである。
己の背中にておとなしくなった凜の温もりを直に。
そして、だからこそわかる、ただの少女のよわよわしさも直に。
ただ五木が見据えるのは道の先、暗い森しか見えず先のわからない、されど道の先だ。
カクン、と。
凜の頭が上下したのが分かった。
「寝てて構わねえけど?」
「えっ。いえ、でも。五木さんに運んでもらっておいて、そんなこと……」
そんな凜の言葉に、クスリと笑いが漏れてしまうのは許して欲しい
「俺に気を遣う必要はねえよ、ばかかお前」
監禁なんてされて、……いや、そもそも。
こんなところに連れてこられてしまって、疲れているのは自分だろうに。
ここにきて、誘拐の首謀者である五木の心配していられるなどと、とんだ神経の持ち主である。