鈴音~生け贄の巫女~
なんとまあ分かりやすきことと、凛はひっそりと自嘲にも似たような笑みを溢し。
「これはこれは、その――……」
「貴女が、神隠しにあわれた――……」
慌てる大人達の言葉は、どうにも語尾を濁してばかりで要領を得ず。
はい、と短く返事をした凛の顔には半ば諦めの色が含まれていたろう。
何故かと問われれば。
その大人達が着ているものが簡素な着物であり、それはまず現代では見ぬようななりをしていたからである。
今までは、一番近くにいたシンの格好が簡素な洋風姿であったからに、まだ現代と重ねて見ることは出来たと言うに。
神はこんなにも自然に、かつ残酷なタイミングで現実を見せてくるのか。
しかしまあ、この状況であっては神隠しと言うよりは昔の日本にたどり着いた、つまりはタイムトリップをしたと思う方がしっくりとくる。
「ようこそ、安良波村へ」
ざわめく集団の中、凛の方へ一歩踏み出してきたのは一際歳をとって見える老人。