鈴音~生け贄の巫女~

04



ギシッ、ギシッ。


古い廊下は、大人数が通ることによって軋み嫌な音を発てる。


「良き女子であるな」


そう発したは長老であるに、後ろをぞろぞろと歩いてきた村人達はそれぞれ頷く。


「まずはこの村に馴染んでいただきますれば」


「"あれ"にしてしまうも簡単であると存じまする」


告げるは二人、長老のすぐ後ろに控えた双子の男。


癖のないショートヘア、少し大きめの瞳、どちらも共に漆黒であり、とても深い。

どちらがどう違うのか、パッと見ただけではわからぬ程に似付く双方は。

にやと薄気味悪く笑う。


「わかっておる、わかっておる。今宵は宴じゃ、歓迎会じゃ」


くつくつと長老は肩を揺らし。


「準備せい」


「心得ましてございます」


「であれば、失礼」


刹那、双子の姿は煙のように掻き消えた。


さても厄介なのは人の情であるに、あの女子はどのようにしてこの村に馴染んでいってくれるのやら。

この村は神隠しの先にある場所である。


「行きはよいよい――………」

帰りは怖い、とは良く言ったものだ。


凜はもうここから帰れはしない、もう元の世界に戻れやしない、もう両親にさえ会えもしないのだ。

さあさあ途中経過が楽しみであると、また、ほっほっと笑った。



捕らわれよ、捕らわれよ、クモの巣に捕らわれて食われてしまえ。

されば生きるはクモだけであるに、やはり世の中は弱肉強食であるぞ。

くつくつ、くつくつ。


「なぁ、シンよ―――………」


薄暗い廊下での幕間。




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