鈴音~生け贄の巫女~
故に、凜はぎゅうと拳を握りしめ。
『我々は、貴女の歓迎会を開きたいだけにございますれば。どうかそんなに緊張されまするな。此れから、少しずつでもこの村に馴染んでいって貰えたらと切に願っておりますからこそ』
そっとその拳に触れた、暖かな感触にびくりと肩が跳ねたのは何故かわからない。
しかして、頭を縦に振ってしまった凜はこの宴の席にいる訳である。
机の上に所狭しと置かれる豪勢な料理たちに。
お酒を飲んではすっかり酔いが回り、その一人一人が饒舌な為か辺りは騒がしい。
「凜殿。食べていられまするか。此処に並ぶ料理全て、この安良波村の腕利きがよりをかけて作ったものにございますれば、凜殿のお口にも合うかと」
「え、ぅ、あ、はいっ」
示される豪勢な料理たちに少し舌鼓でも打って見ようかと手を伸ばしては――……その旨さに目をチカチカと回す。
して、そんな凜に近付く二人の男。