鈴音~生け贄の巫女~


しかし表情もとい性格までは似なかったのだろう、にこりと営業スマイルとを向ける方が千夜でにこにこと屈託のないまるで自然な笑顔をしている方が百夜だ。


「御世話が二人、千夜さんと百夜さん。そして用心棒にシンさんがついて下さるようで――……あの、本当、沢山気を使っていただいてありがとうございます」


眉尻を下げ。


見ようによっては困った顔のようにも見える、その顔のまま笑んでは礼を述べる。


そんな凜に、千夜と百夜は再び頭を垂れた。


「いいえ凜殿。こうして貴女様にお仕え出来ることこそ至福にございますれば」


「どうか敬称などなしに、御気軽に呼んで頂きたく思います」


「え、」


だめでしょうか、と、頭を下げたまま言う二人にぱちくりと瞬きをして。


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