鈴音~生け贄の巫女~
「けれども、初対面の方を呼び捨てだなんて――……」
「御気持ちは、存じ上げまする。しかして、貴女様の混乱した御気持ちも察します。故に、」
「少しでも、貴女様の心に許しの場を」
ぐ、と胸が詰まるような思いで息を吸う。
嬉しいと感じて。
ならば、少しくらい喜んでも、感謝しても、……警戒心と恐怖心でガチガチである自分の心に許しをやっても良いのではないかと。
やっと、緩く笑んだ凜は。
「どうか、お顔を上げて下さい」
「は、」
二つの似た顔を見比べ。
うふふと笑うは年頃の娘の顔であるに。
千夜と百夜の頬が些か赤く火照ったのは致し方ない。
「千夜」
「はい」
「百夜」
「はい」
「これから、よろしくお願いいたします」
「「は、心得ましてございます」」