鈴音~生け贄の巫女~
庭へと出れば、そこにはもう広間の騒がしさや熱気ははない。
静寂と、些か肌寒くさえ感じるくらいの気温とが、凜の表情に薄く影を落とした。
村人は皆優しい。
シンや村長、先程挨拶をさせて貰った千夜や百夜だって。
しかして少しずつこの村に馴染んでいって。
時がたつと共に、あちらの世界――……現世にいたことを、そして両親の事さえも、忘れてしまうのではないかと。
一抹の不安を覚えてしまって。
庭の土を静かに踏み。
そのとき。
チリン。
鈴の音が聞こえ、また静かに振り返った。
「シン、さん……」
いつからそこに佇んでいたのか、銀髪の男は凜をじぃと見ていて。
見透かされているような感覚に襲われた凜は、思わず一歩だけ後ろに足を引いてしまう。
しかしシンは、その分一歩だけ此方に近付く。
この距離がもどかしい。