鈴音~生け贄の巫女~
けれども自分から近付く事の出来ぬ凜は、その距離のままシンを見つめ返す。
チリンと鈴の音が聞こえる。
「どう、したんですか?」
「それは此方の台詞だな」
はぁ、て短い溜め息を吐いたシンは、今度こそ距離を詰めるべく歩を進めた。
「こういう時、どんな言葉をかけるべきかとんと見当がつかない。ただ」
シンは、凜の髪へと手を伸ばす。
近い距離、見上げたシンの顔が悲しげに見えたのは何故だろうか。
今の凜にはわからない。
「村に、俺に、気を許してはいけない。そして、どうか、お前には生き抜いて欲しい」
「……気、を……?」
するりと凜の髪を一束掬い上げて。
少しだけ頬に擦れた毛先がくすぐったくて、凜は少しだけ身動いだ。