鈴音~生け贄の巫女~


声にならぬ声、やっとその場にたどり着けばはぁはぁと荒い息をどうにかしようと胸を抑え。


かくんと膝が折れてしまったのは何故なのか、安心故か疲れ故か。


そんな凛を一別した「人影」。

否、一人の男は、灯りに髪を照らされてオレンジに見えはするも、実際は銀髪。

瞳は赤に見えた。


普通ならば異質であるその色、しかし今の凛にはどうでも良いことだった。


「あ、の、……私、迷っちゃった見たいで……っ」


嗚咽の混じったような声。

もとよりあまり大きくはない声、しかも乱れた息をしっかりと抑えることをせずに話そうとすればそうなることも致し方あるまい。


しかして必死に己の現状を話そうとする凛の言葉に耳を傾け、男は一度長い睫毛を伏せた。

その表情にはどこか影があり、見ようによっては憂いを帯び儚く、言い方によっては美しく見えた。


暫し、魅入って言葉を忘れるが。


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