鈴音~生け贄の巫女~
故に辛くないと言えば嘘にはなるが、心配をかける程ではないと。
そう言おうとしたわけなのだが。
「速かったか?」
尻窄っていく凛の言葉の先をシンに言われれば、びくりと肩を揺らし。
凛が否定の意味をありったけに込めてぶんぶんと首を振れば、次はシンが怪訝そうに眉を潜めるのだ。
意志疎通が図れないわけではないこの二人は、どうにもお互いに言葉が足りないようである。
「………」
「………」
暫し、気まずい沈黙が流れ。
最初にそれを破ったのはシンだった。
「掴まっていろ。そっちのほうがペースもあわせられるし、お前も俺に寄りかかれる」
凛の目の前に出したままである手を、今度は手に持っていく。
そのまま返事を聞かずに繋いでしまえば、ずんと大きく足を踏み出した。