鈴音~生け贄の巫女~
シンから視線を離し、きゅと胸の前で繋がっていない方の手を握る。
「――……もう少しの辛抱だ、凜」
さすれば、それを見たシンが辛いのだろうかと勘違いしたのだろう。
そんな言葉をかけながらわざわざ振り返りちらりと視線を落とせば、一度足を止め。
「ただ、最後の難関があってな」
「………っ」
困ったように凜を見つめる。
どうしたのかとシンの先へと視線を移せば、そこにはとてつもなく長いように見える階段が立ちはだかっていたのだからたまったものではあるまいて。
「この上に神社がある」
「上、に……」
凜の視線を追うようにして階段を見たシンは、ふうと息を吐き。
実に自然な動きで凜の手を話してから、その前に背を向けて跪いた。
「乗れ」
流石にその意図が読めぬ凜ではなく、ぶんぶんと首をふれば。
「だっ、だめです、だめですだめです、私重いですよ……!」
「そんなことはない。寧ろ軽すぎるくらいだ」
間髪を入れずに返ってきた言葉に言葉を詰まらせる。