鈴音~生け贄の巫女~
自分の後頭部で両手を組み、見上げてくる少年――……太一(たいち)に首を傾げてみせ。
ゆったりとした足取りで階段の方を向けば、一度息を吐いた。
「あ、の、シンさん。大変でしたら、私……」
「大丈夫だ」
「で、でも……!」
己の背中の上で尚も食い下がる凜に、ふっと笑んで見せて。
「そんなに言うならば――……そうだな。じっとしていてくれ」
「は、はいっ」
はっきりと返事をしながら、ぎゅうと首にしがみついてくるとはまた如何なものか。
またしても意図せずに笑んだシンは、階段へと足をかける。
「なあなあねーちゃん、名前は?俺、太一ってんだ」
「あ、私は凜です。東条凜」
そんなささやかな自己紹介を聞きつつ。
シンは徐々に見えてくる神社の鳥居を仰ぎ見ては、その下に見える小さな人影を見つけるのだ。