鈴音~生け贄の巫女~


「あっ、……えっと、凜、……です」


些かの間を置くも優しげな笑顔を浮かべて答えてくれた凜へと、子供たちはひまわりのような笑顔を向けて。


「僕はね、隆太(りゅうた)!」


「僕は卓(たく)!」


「俺、太一!」


「太一は、知ってるよ」


次々に名乗ってくれた男子と、それに混ざって再度名乗る太一にくすりと笑ってしまう。


「おねーちゃん。私は、花(はな)っていうの。あのね、お花が好きなんだ」


「……有菜(ゆな)」


くい、と服の裾を一度だけ控えめに引かれて。


そちらを見れば、黒髪の綺麗な女の子が二人。

一人は社交的で元気そうな印象をうけるが、もう一人は控えめに名を名乗るだけで。

少し俯いて見えたものだから、気になって覗き込んでみればふいと顔を逸らされてしまう。


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