鈴音~生け贄の巫女~
間が空き、はっとした凛は問いたいことを聞く。
「ここ、どこ……です、か……?」
トクン、と心臓の音が鳴った気がした。
一際大きく。
そして、どんどん早くなっていく錯覚。
「此処、か」
初めて口を開いた男の声は、抑揚がなく。
冷たい。
そしてこの時、凛は何故か嫌だ、と思った。
動物の本能だろうか。
次に告げられる言葉を聞いてはだめだ、聞きたくない、と。
警告をだす。
けれども男はその薄い唇を動かして。
「……お前のような、現し世に住む人間が来ていい場所ではないな」
「現し、世……?」
あまり聞き慣れぬ言葉。
なんだ、やばいと思った本能は外れたか。
そう心のうちで思いつつ問い返し。
「天国でも地獄でもない。お前は最早どちらにも行けまい」
は、と短い声が出る。
「神隠しという言葉を知っているか?」
続く突拍子もない質問に、ひとつ頷いた。