鈴音~生け贄の巫女~
ただ、一度だけ。
何かを感じ取ったか、シンか辺りを見回すことがありけるに、それは本当にただの一度だけであり。
クツクツと滑稽な物を見るかのように肩を揺らした五木は最後に濃い殺気を残して、その場を去り行く。
勿論、その間も全く気付かれることはなかった。
「あーあ、結局はダメダメだ。こんな村のしきたりに……否、呪いか。そんなもんに縛られて死ぬくらいならいっそ、」
俺たちが殺してやろうぜ?
そう呟いた五木に、神威は薄く悲しみの色をのせた瞳を伏せて。
後には、五木の手から流れ落ちたひとしずくの血が残った。