鈴音~生け贄の巫女~
04
とある晴れやかな日。
いつもと変わらず田畑仕事の手伝いの途中、熱中症が心配だから少し休んでおいでと妙に言われて凛は畑の見える屋敷の縁側に腰掛けていた。
別に凛短足である訳でもあるまいに、ただし身長との比率のお陰で地面に届かぬ両足をぷらぷらとさせ、ふと背後から聞こえた声に上を見る。
「凛様、お疲れ様でございます。御茶をお入れ致しましたので、どうぞお休みいただければと――……」
「あ。はい、ありがとうございます、百夜さん。妙さんにも心配されちゃいましたし、御言葉に甘えている最中でして」
笑顔がとても屈託のない無邪気なものであった為に、これは双子のうち百夜であると判断した凛はその名前を臆することなく使い。
凛殿、なんて堅苦しい呼び方がすこしばかり緩められたことに密かに安堵する。
対する百夜は、驚いたようにぽかんと口を開けて凛を見るのだ。