鈴音~生け贄の巫女~
「……?どうかしましたか、百夜さん」
「あ、いえ……、」
「百夜さん?」
首を傾げ、覗き込まれてしまえばばつが悪そうに視線を外しけるに、口許を押さえて。
もごもごと、くぐもった声にて些か気恥ずかしげな声色を隠す。
「その、私等双子が瓜二つにて、この短期間で間違うことなく名を呼ばれたのは凛様が初めてにございますれば。如何様にして私等双子の見分けを致しましたか、お聞きしてもよろしいか」
して、御次にぱちくりと瞳を瞬くは凛の番であるに。
「百夜さんは百夜さん。千夜さんは千夜さん。ええと、どのように、と言われても、その――……違うものは、違います。確かに似ていますけど……」
言いたいことが纏まらぬと、そのちぐはぐで曖昧な己の言葉を恥じて頬に熱が集まる。