鈴音~生け贄の巫女~
そんな凛を見て、百夜は密かにクスリと笑った。
こんなことを言ってくれたのは、この娘が初めてだ、と。
「どうした、百夜。茶は運んだか」
丁度、縁側に面した廊下を通ろうと向かい側からやってくるは百夜の兄である千夜。
その表情は、仕草は、やはり百夜とは違うように見えると言うに何故見分けがつかないのだろうかと凛は思う。
「おお、千夜。いやな、凛様は私と千夜の見分けがつくとな」
「……ほぉ」
百夜の喜びの見える言葉に千夜は凛へと視線を向け。
畑の方へと不意に向けるものだから、ついつい凛もそれを追う。
「それはそれは、あの不愉快極まりない男以来であるに。凛様はどうかアレと同じくならぬよう願うばかりに御座いますれば」
「千夜」
「なに、本当のこと」