鈴音~生け贄の巫女~


その視線の先には、畑を耕すシンがおり。


それを見る千夜の瞳は、つぅいと細く細く。

そして熱烈な視線にシンは耕す手を止めて此方を見やった。


「……、」


バチバチ、と火花が散ったような気がして、凛は肩を竦める。


「おお、怖や怖や。凛様の前で何をなさるか、千夜とシンはまるで犬猿。否そんな可愛いらしきものではあるまい」


何が面白いのか、百夜はそんな二人を見てくつくつと肩を揺らす。


「龍と虎か」


「こ、怖いです。千夜さんとシンさんは仲悪いんですか?」


恐る恐る、と言った具合に二人を観察していた凛も、まさにその例えが合うと頭の中で思いつつも。


仲が悪いのは見てとれることであるに、それをいちいち聞いたのは、直接「何故こんなに仲が悪いのか」と聞くことを躊躇ったからである。


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