鈴音~生け贄の巫女~
「まて、百夜。凛様をどこにやる気だ」
「………百夜」
しかして、そこに千夜とシンが近付いて来たものだから。
先程まで火花を散らしていた二人であるだけに、険悪な雰囲気が除かれていないのを見ればこの二人が原因か、はたまた気のせいかと片付けてしまった。
故に、この事は胸にしまってしまって。
「折角なので、もう少し景色の良い場所にてお茶をと」
「何故私に声をかけない」
「何故俺に声をかけない」
仲が悪いくせに、言葉が被る二人にクスリと小さな笑みを漏らす頃には忘れてしまう。
平和だなあなんて威圧的に百夜に詰め寄る千夜とシンを横目に空を仰いだ凛は、ふと妙にもらった和菓子が自分の部屋にあることを思い出す。
「そうだ。お茶にぴったりな和菓子を妙さんに貰ったんです――……私、持ってきますね!」
そう、じゃれあう三人に一言残して。
ぱたぱたと廊下を走れば、どうか転ばぬよう、と千夜の言葉が聞こえた。
「はい!」
少しだけ振り返り、それに返事をすれば角を曲がって。
三人から、まるで見えぬ位置に入り込んだ。