鈴音~生け贄の巫女~
直後の、暗転。
全ての感覚は継続されて残る。
ただ、それら全てが遅く感じられて、とてつもない浮遊感が襲う。
「―――………ッ!?」
突然のことに声は上がらず、喉を掠めるように出てきた空気の音が角を曲がった先にいるシン達に聞こえるはずもなく。
目元を布のようなもので覆われ、強い力でぐいと引き寄せられればいとも簡単によろけて従う体。
「大人しくしとけよ?」
低く、底冷えするような声の持ち主が耳元で囁き、そこでやっと凛はただの混乱状態から恐怖する。
返事をする代わりにヒュ、と喉を鳴らせば鼻で笑われた。
そんなこと言われずとも、体が動いてくれるはずなどないのに。
「へーぇ、イーコじゃん。あいつらの為に和菓子持ってくんだろ?ほら、返事」
つ、と喉をなぞるように優しく爪が立てられて、思わず体を固めた。
感触が冷たい。
血の通った人間に触れられているとは到底思えぬ、例えぬならば氷の刃、黄金の針、――………。
言われた通りに返事をしなければ、速攻で喉を貫かれると確信する。