鈴音~生け贄の巫女~
「立っときなよ、ずっと寝たきりだったから体痛いんじゃねぇの?」
その言葉に従いつつ、やはり近くで聞こえる声は五木のものであるからして。
頭に乗せられた手はきっと五木の手であると思えるに、先ほど足蹴にされて恐怖を味わったのを思い出す。
そして、ゆっくりと立ち上がりながらも知れず体を随分と強張らせたのだ。
それを見て鼻で笑ったのは一瞬、すぐに優しげにポンポンと撫でた五木の行動の意味とはいかに。
……簡単である。
「へぇ、警戒はできる訳だ?ただの馬鹿ってだけでもねぇのな。………なぁ、神威サーン?」
凛の行動を見た。
そして、後半飛ばされた問いは、勿論凛に向かったものではない。
五木よりももっと遠く――……気配も届かぬ、しかして声は聞こえる。
そんな位置から、もうひとつ新たな声が凛の耳に飛び込んだ。