鈴音~生け贄の巫女~


そうして、自分と五木から些かの距離を置く男。


この世界には珍しい、金髪をもつその男こそ、臭いがどうのと文句を言っていた神威に違いない。

切れ長な瞳は赤く、頭の片隅で思うはそれと同じ赤目を持つシンのことだ。

嗚呼。

………自分はどうなるのかと、凛はただただ考える。


見えるものだけが鮮明に頭に残る、それほどに周りの闇は深い中で。

瞳を不安げに揺らす凛に向けて、五木は芝居がかって頭を垂れるのだ。


「やぁやぁ、コンチニハ初めまして、凛。俺が五木で、」


嗚呼やっぱりあっている。頭の隅でそう思う。


「あっちが神威。ヨロシクー」


「は、――………い、………っ」


軽く、実に軽く言った五木に対して、凛は今日一番の恐怖を感じることとなった。


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