鈴音~生け贄の巫女~
さてその後、凛が五木にされたことと言えば特にない。
――………本当に、特にないのだ。
暗闇の中、何故かくっきりと見える五木と神威の姿を見ては。
何故なにもしないのだろう、何故私をさらったのだろうと、心中を色々な疑問でごちゃごちゃとかき混ぜてしまいつつ。
結局は、なにもできずに押し黙る。
沈黙はずっと続いていた。
チリン。
時折聞こえる鈴音に、耳を傾けるばかりで――…………それをたちきったのは、紛れもない五木だった。
「くそ。似てるなあ……」
それは本人知らずして漏れた独り言か、神威がピクリと反応して。
どこか悲しげに眉を寄せるのを凛は見た。
「……五木」
「あー、ハイハイ。わかってる、わかってる。あいつとこいつは別な。………わかってンだよ。わかってるけど、……っ」
その次の言葉は出ない。
胸につっかえたように出てきてはくれない言葉を抱えて、五木は凛に背を向けてしまった。