鈴音~生け贄の巫女~


「ほら、これで逃げられるだろ?手が自由になったんだからね。まぁ、逃げられるなら、の話」


もうひとつ、近くで聞こえた声は。

五木である。

息を飲む。


逃げ出したい。

とても逃げ出したい、そして今まさに逃げられる状態にある。


けれども、逃げられる"状況"では一切なかった。

凛はせめてその状況を見てみようと、光に驚いて瞑っていた目を開く。


近くには五木と神威。

凛の首をガッチリと拘束しているのは神威、その隣でシンと退治して立つのが五木と言うわけだ。


そうして目の前、開いたら扉の一歩向こう側にはシンが、汗だくで息のあがったシンが、いると言うのに逃げられない。


―――――………希望が目の前にあるだけに、辛かった。


「一人でお出ましか?余裕じゃねえかよ、俺達二人に対してさぁ」


「五月蝿い」



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