鈴音~生け贄の巫女~
「お主名を五木といったか。己の立場を弁えよ。そして、言葉に気を付けよ。……わかるか?」
向けた言葉そのものには、明らかな棘が含まれていた。
それに加勢するは百夜だ。
こちらはこちらで、笑顔で言い放つからこそタチが悪い。
漂う雰囲気は黒いと表現しただけでは足らぬほどで、ついと細めた瞳に恐怖を感じる。
「先ほど、貴様がシンに向けて言っていたことでありましょうや。わからぬとは言えますまい」
「……っ」
「この状況下においてどちらが不利か、良く良く考えよ」
チ、と五木が舌打ちをする。
一瞬だけ神威と目配せをして、悔しげにシンを見るや。
「今日はここで引き下がってやるよ、シン―――………けどなあ、忘れんなよ。お前は、ただの人殺しに他ならない」
「……五木」
「俺の名前を呼ぶなっ!!」