鈴音~生け贄の巫女~


静かに響くシンの声に対して、五木の声は荒ぐ。


その瞳に宿るは怒りか憎しみか、ゆらり揺れるそれの炎が漆黒に浮かび上がっているように見えた。


「それなのになんだ、お前……、その顔、その瞳!違うだろう、綾香の時と何故そんなにも違う……っ!」


足早に神威を通り過ぎて。

千夜と百夜をすり抜け凜をも無視し、向かうはシンの元。

手を伸ばし、その襟を掴めばぐっと顔を寄せた。


感情的になりすぎたせいか、些か震え。


「五木、おさえろ」


「るせぇ……!」


自制を促す神威にさえ短く吐いた。

おさえられないと。

しかして、この場にいるはシンと神威だけではない。


「五木、さん」


小さな声で名を呼ぶは凜。

胸の前で固く握りしめられた両手は震えることなく、双方の目はただまっすぐに五木を見た。


シンから視線を移しそれと瞳がかち合った五木は、そっとゆっくりと手を離し。


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