鈴音~生け贄の巫女~
そこらは人として、凜を受け入れた村の人として、良心がそうさせることを拒む。
どうしたものかと唸った後、長老は顎に生やしたフサフサの白い髭を撫でながら口を開く。
「そもそも、付きっきりで警護するということ事態が難しいことよの。まさか風呂まで一緒に入ることなどできまいて。戸の前で待っていたとて、中で何かがあったら分からぬわい」
「……長老」
「いやなに、本当のことじゃて。して、付きっきりで警護が出来ないのでは致し方ない、致し方ないことであるぞ」
長老の纏う雰囲気が、ひいては部屋の雰囲気が、一気にピリピリとしたものとなる。
長老が発する次の言葉は大方予想がついた。
だからこそ、提案をした百夜は深く頭を下げる。
千夜は苦虫を噛み潰したような顔をして、シンは深く、深く感情を圧し殺して瞳を閉じる。
―――………すまない。
心の中で、そう呟きながら。