鈴音~生け贄の巫女~


「え……?」


ただ、伸ばされた手がそっと凜の頬に当てられた。

くすぐったいと少しばかり瞳を閉じた瞬間に。


コツン、と額に何かがあたる。


驚きに瞳を開ければ、間近にあるのはシンの顔で。

額に付けられたのはシンの額であると気付くと同時、頬に熱が上るのを押さえられない。


「シン、さ……」


けれども、拒むことはなかった。

近くにシンがいる。


そのことの、安心感がとてつもなく大きいものだったから。


「バカな、やつだ……俺のことなんか、どうでもいい……」


「シンさん」


だから、自分の頬に当てられた相手の手に、自分の手を重ねて。

シンの頬に、反対の手を添えてしまおうと伸びる。


「お前が、無事なら……それで、いい……っ」



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