鈴音~生け贄の巫女~
溢れ出しそうな涙を堪える。
ここで泣いたら卑怯だ。
それにシンは、尚更自分のせいだと己を責める。
だから、泣かない。泣けない。
「それでいい」
「……え?」
「お前が、ありがとうとただ一言言ってくれさえすれば、俺は――……」
す、と額に当てられていた物が横にずれるのを感じる。
そうして、優しく全身にかかる重み。
「……シン、さん………?」
スゥ、と穏やかな寝息が耳元で聞こえた。
思わず微笑めば、我慢していた涙がほろりと溢れる。
最近、忙しそうにしていたシンに疲労が溜まっていない筈がない。
そう思いつつも凜はシンに頼り、シンは疲れを凜の前では見せない。
だから、こうして凜の目の前で瞳を閉じ、安心感を覚えて眠りついてくれたのだとしたら、それはとても嬉しい事であると思う。
「ありがとう」
そう、眠るシンに向けて呟きながら。