孤独な天使に愛の手を。


この世界にあんなに美しい人が居たんだ…。


明王寺さんを思い出したら、ポウッと意識が飛ぶ。



あの甘さが滲む低い声。思い出すだけで胸が震える。




なぜだろう、あの人の姿が瞼の裏から離れない。



「…もう一度会いたいな。」



「誰に会いたいって?」


「う、うわぁ!!」



この部屋に自分以外の人間がいるなんて思ってもみなかった私は、驚いて座っていたソファから転げ落ちてしまった。



「え、え、誰?」


「俺。ひどいなぁ、忘れたのか?」


「あ、椿(ツバキ)かぁ。もう、びっくりさせないでよね。」



というか、どいつもこいつもノックしないで入ってくるね…。



「ごめん、ごめん。」




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