ナ ニ モ ナ イ ト コ ロ【思集】
+ 夜に見た一輪の“華”
ただ一輪
夜に揺れる華を見つけた
月が笑っているような
あの夜にふいに……一輪
今までどこに隠れていたのか
今までどこで月を覗いてたのか
尋ねるのも何故か無粋だと
そっと指先で華弁を撫でた
まるで愛想のない
その隠れた華は
時折、風に吹かれて
ふわり愉しげに揺れる
華弁を優しく押しのけて
中の密の味を確かめたり
茎を摘んで、いっその事
全てを眺めてやろうなんて
あんまり虐めちゃ可哀想だから
華弁をまた優しく撫でる
笑う夜の頼りない月灯り
眩しさのないその灯りに照らされ
淡い色を少し変えて
また小さくふわりと揺れた
夜に見つけた
一輪の華
笑夜