ぱんつのおかず



「……やない?藤田さん」



そん時や。


ふいに、聞こえた。こふじの名字。


ザワザワしとる中で、かすかに。藤田って。


人、数人はさんだむこう。


わずかなすき間に見えた、黒頭。


目ぇ見開くと同時に、ドッと、安堵感がこみ上げる。



…おった。



こふじ、おった。




「……あ!!」



僅差で気づいたらしい若松。


口を開きかけた若松の手を、おれは思わず引っぱっとった。


若松を引き留めた理由は。


おれが急いで、声かけにいかんかった理由は。



「藤田さんは、古町くんのこと…どう思ってんの」



…そんな、タマキのセリフが、耳に飛び込んでったからや。



「え…ええっ!?なんで!?」



声が絶妙に裏返った芸人並みのリアクションで、驚くこふじ。


…なにを、聞いとんねん。タマキ。


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