桜幸恋華
一章
運命は歯車の如く
文久三年―‐
凍てつける寒さがます十二月末。
先ほどから追ってくる浪士達が近づいて来る。
白神 美桜は意を決して路地裏に入る。
「まてぇぇぇ~」
浪士の一人が叫んだ。声が近い。美桜はとっさに物陰に隠れた。
(見つかったらどうしよう)
浪士が近づいて来る。美桜は目を瞑った。
「そこの物陰にいるぞ」
(ばれた)
ゆっくり近づいて来る。浪士たちが美桜の目の前にたった。
(殺される)
刀の音がする。死を覚悟した。
ぎゅっと目を閉じたが痛みが来ない。それどころか浪士たちは倒れていた。
「斎藤、回りは片付けたか」
「はい。副長」
すると副長と呼ばれる男は美桜を見た。
「大丈夫か。」
「……」
答えようとしたが声が出ない。だから美桜は頷いた。
「そうか。一応屯所に連れていく。」
(私はどうなっちゃうんだろう…)
私は緊張の糸が切れたのかそこで意識を失った。
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