鬱になれる短編集
「もう少し……」

少女の手はあとわずかで若菜のある崖に届きそうであった。

「もう少し……もう少しなのよ!」

願いは叶わなかった。
少女は絶望した。今まで積み上げたものが目標に達しなかったからだった。あぁ……。お父さんが苦しんでいる。喉に病を負い、声も出せずに。あと少しで父親を救えるのに……。

少女は思い付く。

「高さを足せばいいわ」

つまり

「手頃なのがいるじゃない」
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