鬱になれる短編集
ぽつぽつと。
水滴が頬を湿らす。雨が降ってきそうだった。

霧雨の中、白い塔の前に男性は立ち尽くしていた。目を細め、頂上を見つめていた。

――恐らくは。

理解が追い付かなかったのであろう。彫刻か何かと勘違いしているようであった。あるいは、目を信じていなかった。しかし、それも数瞬。
断末魔の叫びを上げた。

逃げようとする男性。
それを後ろから殴打した。
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