鬱になれる短編集
雨が強くなる。

男性の鮮血は少女に飛沫したが、雨がすぐに洗い流してくれる。

穢らわしい血を。

少女は天を仰ぐ。
全身で水滴を受け止めるように両手を広げると、目を細めた。

視界が白い。
雨粒越しに塔を見れば、さらに白く見えた。
少女は男性を塔に押し込み、高くなったそれを登って、若菜を手に入れた。
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