鬱になれる短編集
三日経っても父親が帰って来ない。
一抹の不安がよぎったのはその時だった。

母親も「おかしいわね」と訝しんだ。そこで少女は、一抹の不安を拭うために例の崖へ来た。塔はまだ立っていた。

少女は一つの材料を引っ張り出して、確認する。それが本当に見知らぬ人だったのか。ただの材料だったのか。

塔は均衡を崩す。
少女に無数の材料が降ってくる。思わず、確認していた材料に抱き付いてしまった。少女は気付いた。父親の柔らかなその瞳を。潰され、事切れるだろう自身を気遣うよりも先に、父親と眠れる今夜を嬉しく思った。

End
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