鬱になれる短編集
「失敗しちゃったね。もう遅いし帰ろうか」
三葉の姉の姿だった。いまは女神にだって見える。あたりからは喧騒が聞こえる。
「常識人すぎるのも困りものね。わたしも第一問で弾かれたわ」
ここは宇宙空間か。それともあの世か。
三葉の疑問よりも先に姉が答える。
「五分くらいすると経緯(いきさつ)に関する記憶が戻るみたい。新しい世界では知識を持った人は必要ないんだわ。洗脳しやすいからじゃないかしら」