鬱になれる短編集
姉の声は震えていた。恐怖で悲しげに。
「いま考えるとクロラの言動はおかしかったわ。わたしたちはテストに正解したけれど、失敗してしまったのね」
姉は涙を流した。
声を出さずに泣いていた。
三葉の脳裏にはうっすらと記憶が戻ってきて――選抜という言葉が浮かんだ。
姉は三葉を抱きしめる。
三葉は経緯に関する記憶を取り戻しつつあった。残酷で悲惨で痛烈な映像に頭が割れそうになる。
これが人間の所業か。
地球は破壊されていた。人間が生活できないほどに。
だが、恐怖を感じなかった。姉の柔らかな体温を感じていたからだ。球体の中で闇を感じ続けるよりはずっといい。
どこまでも破壊されていく中で変わらないものがある。
三葉は姉を抱きしめ、幸福を見つけた気がした。